【12の住まい】05：真藤眞榮さん
70代・ひとり暮らし
介護をしていた母を看取って、一緒に住んでいた都心の70 坪の住まいから、まったく地縁のない横浜にある17 坪のシニアマンションへの住み替えを決めた真藤さん。知人が暮らしていたケア付きシニアマンションを購入して、思い通りにリノベーション。5年経ったいまでは、マンション内の友人が増え、趣味に遊びに大忙しの毎日を過ごす。
→物の整理、思い出の品、コミュニケーション、アート、人を招く、趣味、寝室
70坪から17坪へのサイズダウン住み替え
母を看取ったことから、長年住み慣れた都心の住まいからの住み替えを決めた真藤さん。５年前に、知人のおばあさまが住んでいたシニアマンションのこの部屋が売りに出されると聞いて、早速見に行って購入を決めた。
それまでの住まいは都心のビル。2フロアを自宅として住んでいた。70坪から17坪のサイズダウンとなる。母・娘の三世代で暮らした住まいだったが、手放すことにためらいはなかったという。
「マンションだと、大雨や台風で雨漏りを心配したり、ごみ出しの手間を考えたりすることなく、安心して暮らせるのが、本当に嬉しいわ」
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| 購入した2LDKの部屋を1DKに間取り変更。テーブル以外の飾り棚、ビューローデスク、引き出しなどの家具は、長年使っていたものを持ってきた。南向きの窓からは、貼れた日には富士山が見える。 |
マンションで落語みたいな長屋暮らし
真藤さんのシニアマンションは、介護を受けていない健康な人が住める、所有権分譲方式。そこに共用施設のケアサービスが付帯する。広い住まいにたっぷりあった物を処分・選別し、コロナ禍まっさかりにひとり引っ越しを敢行した。
「地縁ゼロ、お友達ゼロのゼロスタートで始まった、初めてのひとりマンション暮らしだったけれど、少しずつ趣味の合うお友達ができて、いまや大勢のお仲間ができました。ベランダの戸境扉は、安全上の理由から鍵がかかってないんですが、お隣に気の合うご夫婦が引っ越してきてからはベランダから行き来。留守中は、お水やっておくから〜なんてご近所付き合いをしています」
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| リビングからフラットな床で続く寝室。来客時には障子で目隠しすることも。 |
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| 着物を収めるために最小限の和箪笥を持ってきた。 |
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| 「長野に遊びに行ったときに、松本民芸家具でもう一脚椅子を買い足したの」子どもの頃から、松本民芸家具の家具を選んで使っていた。左側の椅子は長年使っていたもの。右側の椅子は、最近新たに買ったもの。長く続いている老舗ブランドの家具は、こうやって買い足しできるのがメリットだ。椅子の後ろのビューローも、学生時代から使っている松本民芸家具のもの。 |
毎朝必ずお茶をあげて、父母の思い出と一緒に生きる
仏壇は置いていないが、父母の写真を飾ったコーナーを設えて、毎朝お茶のお供えは欠かさず。両親の好物や到来物を月命日に供えている。
「両親だけでなく、知り合いのおばちゃまや亡くなったお友達の写真もあって、いつもお菓子や果物が供えてあるにぎやかなコーナーになっています」
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| 両親が好きだったお相撲は錦絵を飾って。飾り棚には、両親の写真、思い出の食器なども。 |
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| テレビ台に飾った両親の写真。 |
食は大切。でもキッチンはコンパクトに
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| IHを導入したキッチンはコンパクトな仕様。マンション内には、管理栄養士・調理師による食堂があるため一日三食を食堂で摂ることもできるし、もちろん自炊も可能だ。真藤さんは、メニューによって食堂を選ぶこともある。「好みの味付けじゃなくても、食べて褒めて育てなくちゃ（笑）」 |
真藤さんは食べることが大好き。以前の住まいでは、広いキッチンで毎日食事を作り、人を招いての食事が多かった。
サイズダウンした住まいへの引っ越しをきっかけに、冷蔵庫もコンパクトに、使う食器も最小限のものだけにした。併設の食堂の食事は、テイクアウトもできるので、持ち帰って部屋で食べることもある。もちろんそれ以外に、外食も楽しむ。
「気の合う仲間と、美味しんぼの会を結成して、近隣の美味しいお店へ食べにいくこともあります。みんなで美味しいものを食べながらワイワイおしゃべりするの。みんな一緒に帰ってくる場所も同じマンションだし、楽しいわよ」
お菓子や食品のいただきものが届く度、自分で買ってくる度に、マンション内のお友達に配って歩くのも日課となった。
「うちのマンションは、まるで縦長屋ねって、よく言ってるの。まったく知り合いのいなかったマンションだったけど、5年ほどでどんどん気の合うお友達が増えていきました。マンションには、私より先輩の方も多いですから、私なんて使いっ走りよ（笑）」
安全面で安心できるのもシニアマンションのメリット
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| 浴室やトレイには緊急コールのための「呼出」ボタンが設置されていて、何かあったらスタッフのいる管理室にすぐつながる。管理室では、看護師が24時間体制で待機。1階には協力医療機関のクリニックが併設されていて、健康や安全面での安心が保障されている。 |
安全のための緊急コールシステムや、何かあったらすぐマンション内のクリニックで診てもらえるのも、シニアマンションの大きなメリットだ。
管理室のスタッフとも仲よくなって、部屋のリフォームや設備交換の相談にも気軽にのってもらっている。
毎日が自分ファーストの暮らしにシフト
マンション内にはさまざまなサークル活動があり、真藤さんはヨガ、ビリヤードなどのサークルに属している。ビリヤードは、自分のキューを購入して毎日練習に励むほど。
マンション内には、食堂やクリニックのほか、ビリヤード台、図書室、大浴場、茶室などの共用施設が揃っており、アクティビティを楽しむにはうってつけだ。
「それまでが母の介護で、自分のことどころじゃなかったから、5年経ってもいまの暮らしが嘘のように思えます。毎日が自分ファーストの暮らしなんだけど、最近は仲間との遊びに忙しすぎて、毎日があっという間に過ぎていきます。もちろん、マンションだからいやな人とわざわざお付き合いもする必要もなし。」
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| 最近はごく親しい友人とおしゃべりしながら自宅で気楽に楽しむ新しい趣味として麻雀が加わった。真藤さんの部屋が集まりの場となっているので、新たに椅子を追加した。 |
真藤さんのシングルライフの暮らしは、さまざまなメディアで取り上げられている。なかには、雑誌を読んだ娘さんが、「このシニアマンションに住めば？」と探してきてくれて、地方から引っ越してきた方もいるそうだ。
「最近、外国で暮らしていた親友が病気で亡くなって、その旦那が、日本滞在中はここで暮らしたいと言って、引っ越してくることになりました。シニアマンションも悪くないでしょう？って、よく友だちに話しています」
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| 以前から先生について習っていた金継ぎ教室も、住み替えをきっかけに再開。介護の役目を終えて、趣味に遊びに、自分ファーストの暮らしが始まった。 |
「別に広報担当でもないんだけど(笑）、いまひとり暮らししている若い友だちにも、元気なうちにここを買っておけば安心よ、って言っています。まだ仕事をしている人はこのマンションから通勤している人もいますし、夫婦や姉妹で、別々の部屋を買って住んでいる人も。夫婦でも、年をとったら四六時中一緒にいるのも大変だから、そういう住み方もシニアマンションならうまくいくみたいですよ」
真藤さんのシニアマンション暮らしは、社交的な人柄や魅力によるものも多いが、傍目で見ていても楽しそうな暮らしぶりがわかる。
住まいの中にコミュニティが育まれて、趣味や関心事で交流する場になっているのだ。
何でも自分で決めて、自分で人生設計するのが好きな方であれば、こうした住まい方も楽しく捉えてやっていけそうだ。
撮影：三村健二
