藤野千夜さんの小説『団地のふたり』は、2024年秋にNHKドラマ化されて、主人公なっちゃんとノエチのほのぼの団地ライフが映像でも楽しめました。
続編『また団地のふたり』でも、相変わらずふたりの団地ライフが続いています。
年齢を重ねてきたせいでしょうか、こういう大きな事件がほとんど起こらない物語って、しみじみいいなあと思うようになりました。毎日の日常がこういう、普通の日の積み重ねでできあがっていて、それはかけがえがないなあ、と。時代的にもみんなそんなお話を求めているような気がします。
実家の片づけ、実家じまい
そんな中にも、ノエチの義理のお姉さんの実家の片づけという出来事が起こります。
ご両親が亡くなったあと、空き家になった納戸や蔵のある実家を片づけている義姉。まさにいまover 50’s世代が直面している、実家じまいの問題です。実家の思い出があるものだとしても、全部そのまま引き取るわけにはいきません。それでなくても親世代は、ものを大事にして、もったいないからと溜め込みがちです。
ノエチの義姉も、このあと業者さんに不要品を引き取ってもらう手はずになっていました。
ものを受け継いでいく
ノエチのお兄さんのすすめで、なっちゃんたちはめぼしいお宝になりそうなものを引き取って、団地の住民向けに無料バザーを開催します。
誰かがいらないものも、誰かが必要なものになる。そう考えると、バザーもフリマアプリも、人と人とをつないで、ものを受け渡していくという点で世の中で役立っている訳です。
ミニマリストとまでいかなくても、必要最低限のもので生きていくことや、自分の身仕舞いについても考えさせられるお話でした。個人的には、またなっちゃんとノエチの物語がこのままゆるゆると長く続いて、彼女たちがおばあちゃんになるまでずっと読んでいきたいと思いました。
藤野 千夜『また団地のふたり』
https://video.unext.jp/book/title/BSD0000881226
仕様:46判/上製/216ページ
出版社:U-NEXTパブリッシング
発売⽇:2024年10⽉25日
税込定価:1600円(本体1760円)
ISBN:978-4-911106-27-3
装幀:鈴木久美
装画:北澤平祐