「Njordrum Care 」による国内初のグループホーム
デンマークの建築スタジオ「Njordrum Care (ニョードルム・ケア)」が、デザインとコンセプトを手がけたグループホーム(千葉県船橋市)が完成しました。
2024年6月28日に開催された、グループホームの現地見学と来日中のNjordrum Careメンバーのトークイベントに参加しました。
施主は、障がいのある方のニーズと活動を支援する福祉サービス事業所「空と海」です。
緑豊かな森のある敷地内には、「空と海」のグループホーム、スタジオ、作品の展示・販売を行うアトリエ、カフェレストランがあり、利用者さん、スタッフ、訪問者が交流できる素敵な場所です。
Njordrum Careがデザインを手がけた新しいグループホームは、その敷地内にあります。
当日はあいにくの大雨でしたが、熱心な見学者が集い、トークイベントでは活発な対話が展開しました。
“自然も建築の一部” 地場の木、自然素材を多用した住まい
Njordrum Careのコンセプトは、木造モジュラー式プレハブ建築。
そして「自然をより身近に感じること」です。
すべての構造体は、木でできています。
今回はグループホームでしたが、レゴのようなユニットの組み合わせで、個人住宅、施設など、目的に合わせたさまざまな建築物が展開します。
デンマークでは、工場で一棟まるごと木造モジュラーの家を建てて、現地に運ぶ方式をとっており、効率性や工期の短縮、大工さんの労働環境の改善を行っています。
日本の建築環境は公道も狭いため、デンマークそのままにはいきませんが、Njordrum Careの図面のあり方や考え方が効率的なため、工期の短縮にもつながりました。
また、自然素材としての木を多用するのも彼らのコンセプトのひとつ。
使用する木には、なるべくその土地のローカルな木材を使うようにしているとのこと。
今回も、外壁やウッドチップに、「空と海」の辺りに生えていた杉材が使われていました。
内外装の塗装は、「空と海」の皆さんで行ったそうで、スタッフや利用者さんにとっても愛着のある建物となったようです。
住まいの中にもパブリックとプライベートが必要
グループホームの内部には、個々の部屋のプライベートな空間と、皆が集うパブリックなスペースとが、緩やかにつながる工夫やデザインが施されていたのが印象的でした。
パブリックスペースのまわりには、壁際に小さなベンチがあり、なんとなく他の人のおしゃべりを聞いたりできる居場所が用意されています。
またパブリックスペースに面して大きく設けられた窓には、外にある木々の景色が映り、“自然も建築の一部”として、デザインされていることがよくわかります。
・プライベートとパブリックの関係
・自分の巣のようなプライベートスペース
・自然素材や自然を多く取り入れる
・庭も部屋の一部である
といった点は、以前ケアリングデザインHPでご紹介した、がん患者とその家族のための「マギーズセンター」の建築コンセプトとも共通点が多く、そこに集う人・住まう人が安心して過ごせるための配慮が、デザインや設計思想に根づいていることに大変感銘を受けました。
科学的根拠に基づく居心地の設計
Njordrum Careのデザインする建築では、温度、湿度、照明、採光、色などの住環境の居心地についても、科学的根拠に基づいた設計が施されています。
障がいのある方に居心地よく配慮された住環境は、すべての人々にとっても過ごしやすいものです。
また、Njordrum Careは、認知症の方々のための小さな村のような老人ホーム、自閉症の方々のための施設、デイケアセンターなど、本国でさまざまなプロジェクトを手がけています。
見学会での対話では、これら内容についても紹介されていました。
これからNjordrum Careの日本国内での事例が増えていけば、日本のグループホームや住居の考え方が変わっていきそうな予感がします。
デザイン・設計:Njordrum Care
デザイン翻訳:Njordrum Care, Japan (風と地と木 合同会社)
プロジェクトパートナー(建築会社):Juuri Inc.(ハルタ建築設計事務所より社名変更)
問い合わせ先:Njordrum Care, Japan
3D images by NOR3D