ダニエル・シュミット監督が、歌舞伎役者 坂東玉三郎を撮った映画『書かれた顔』は、以前から知っていましたが、なかなか見る機会がなくて残念に思っていました。
今年になって4Kレストア版が上映されて、ようやくこの幻の名作を見ることができました。
もっと若い頃の撮影かと思っていたけれど、映画公開当時の玉三郎は45歳。
さらに、舞踊家 武原はん、女優 杉村春子、芸者 蔦清小松朝じ、舞踏家 大野一雄といった、そうそうたる先達が、芸を語り、女を語り、女を踊るという豪華さ。
そうか、この映画は、女と老年を描いたものだったのかと腑に落ちました。
圧巻は、湾岸での大野一雄の舞踏。よくぞこの貴重な映像を映画に収めてくれたと、ダニエル・シュミット監督に感謝。
映画『ラ・パロマ』で有名なダニエル・シュミット監督ですが、リタイアした音楽家たちのための施設「Casa di Riposo per Musicisti(音楽家たちの憩いの家)」をテーマにした作品『トスカの接吻』でも、老年音楽家たちのリアルな姿をいきいきと描き出していました。
作中では、40代半ばで「人生の黄昏—トワイライト」について語る玉三郎のシーンもあります。
「トワイライトって、一つの言い方はうつろいなんですよ。変わって行く途中であるということね。」
Good Over 50’sもまた、人生が変わっていく途中の過程といえるかもしれません。
『書かれた顔 4Kレストア版』
出演:坂東玉三郎、武原はん、杉村春子、大野一雄、蔦清小松朝じ、坂東弥十郎、宍戸開、永澤俊矢
1995年/日本・スイス合作/カラー/94分/ヴィスタ・サイズ
監督:ダニエル・シュミット
撮影:レナート・ベルタ
製作:ユーロスペース、T&Cフィルム
プロデューサー:堀越謙三、マルセル・ホーン
配給:ユーロスペースhttp://www.eurospace.co.jp/
公式サイト:https://kakaretakao.com