Oさんは、8年前にハウスメーカーで3階建ての住宅を建てました。1階は玄関だけで、残りは2台分の駐車スペースをとりました。
隣に住む両親の家は、2階が居住スペースです。両親が年をとって、2階への上り下りがきつくなったら、駐車スペースを両親の住みやすい家にしようと、設計当初から考えていました。思いがけず、父親がパーキンソン病を患い、歩行に手すりや杖が必要となったため、増改築を決意しました。
ハウスメーカーからいくつかの提案がありましたが、納得できるものがなかったため、バリアフリー公的機関が運営する住宅相談に足を運びました。そこで設計は、プロである私に頼む決心をしました。
■設計のポイント
●近所のふれあい、通風と光を取り入れること
父親の生きがいとなっている、近所の人たちとのふれあいを重視しました。一般的な玄関を設けず、土間のような場所をつくり、近所の人たちが気軽に訪ねられるプランがよいと考えました。また、住宅密集地であっても、通風と光を取り入れたい—この2つの条件を満足させるため、ガラス張りの温室を増築し、それを玄関と交流の場を兼ねる場とすることにしました。
既存部分の床に揃えるために、地面から50㎝上げなければなりません。そこで、温室内に取り外し可能な階段を3段設け、中に物が入るように工夫しました。この階段の上り下りは父親のリハビリに一役買っていますが、症状が悪化して車いすを使うようになった場合、取り外して段差解消機が置けるようにしました。
●温室から室内への移動しやすさ
温室から連続した手すりにつかまって、リビング兼ダイニングキッチン、水廻り、寝室へと移動できます。ダイニングキッチンには丸型の可動テーブルをつくり、人数が集まるときは広げられるよう工夫しました。このテーブルは、手すりとしても使われています。ダイニングキッチンと寝室の間は、両側から使う収納家具で仕切り、将来広いスペースが必要になったときには取り外し可能になっています。
●勝手口用のドアを新設して風の通り道と採光を確保
北側にある勝手口は、もともとシャッターがついた開口部でした。既存のシャッターは残し、勝手口用のドアを新設しました。風の通り道をつくり、光を取り入れるため、ドアを閉めたまま、窓状に開閉できる機種を選びました。この勝手口は、万一の避難口としても位置付けています。
また寝室から浴室まで、天井走行リフトがつけられるようにあらかじめ計画してあります。位置を決め、天井裏に下地用の梁とコンセントを用意しました。
リフォーム事例【一戸建て】核家族向け住宅→完全独立型二世帯住宅
家族構成:夫(40代)、妻(30代)
父(80代)、母(70代)
該当工事面積:52.4㎡
構造:鉄骨3階建て
所在地:東京都
工事内容:既存玄関位置変更、温室/LDK/寝室/浴室/トイレ・洗面/納戸の増築、床暖房、エアコン、家具工事、手すり取り付け工事、外構(塀、門扉他)、温室日除け
この事例とは逆に、完全独立型二世帯を同居型へリフォームした事例もあります。家族や住宅の状況に応じて、いろいろな考え方がありますので参考になさってください。