最も大切なのは「全体像を描く」こと【50代リフォーム:57】

リフォーム計画が頭の中に浮かんでくると、さまざまな発見があると思います。家族全員に共通する家へのリクエスト、個々に叶えたい希望、その両方がうまく実るようなリフォームをしたいものです。

リフォームを考えるにあたって、最も大切なことは、将来を見越した「全体像を描く」ことです。仮にいま予定しているリフォームが「トイレ」や「洗面所」など、家のごく一部の空間だったとしても、今後どうやって暮らしたいかという「全体像」がきちんとあれば、家全体のバランスを見ながらリフォームをすることができます。

逆に、リフォームを必要とする箇所が出てくるたびに問題部分だけに対処するリフォームをしていると、継ぎはぎだらけの家になりかねません。

全体像を描く基本は、最適な間取りを考えるということ。間取りを考えるのに有効な手段が「生活動線の見直し」です。生活動線とは、家の中で人がどのように行動するかを、線でとらえることです。実際にいま住んでいる家の見取り図に、自分や家族がふだん家の中でどのように動いているかを線で書き入れてみると、どこをいちばん行き来しているかがわかります。

下図を見てください。
キッチンと廊下の間に何本もの線が重なっています。この部分は家族の行き来が多いところですから、もし段差があったり、物が置いてあって幅が狭かったりすると「バリア」になってしまいます。このように、自分や家族の行動を通して部屋のつながりを見てみると、寝室とトイレが意外と離れているとか、廊下が狭いといったことに気づかされます。高齢期は加齢とともにトイレが近くなり、夜中にトイレに起きる回数が増えますので、寝室の隣にトイレがほしいところです。また、浴室とトイレも隣り合っていた方が、動きがスムーズです。

排泄は人間の尊厳にかかわります
快適なトイレの目安

こうして生活動線を軸に間取を整理すると、現在の間取りの長所や欠点が見えてきます。『キッチン—洗面・脱衣室—浴室—トイレ—寝室』という、家の中の主要部分は回遊性のある空間にするのが理想的だということも、実感をもってわかるはずです。また、将来介護スタッフが家に入ってくることを想定すれば、介護スタッフと顔を合わせずに家族だけが動ける、いわば裏動線をつくっておくと便利です。

部分的なリフォームをする場合でも、まず「理想の我が家像」を描いてみることが大切なのです。

吉田紗栄子、寺林成子著『50代リフォーム 素敵に自分流』(財団法人 経済調査会)より
PHOTO©KATSUHIKO YAMAGISHI/a.collectionRF /amanaimages
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