「リフォームが終わったら離婚するかも」
そう妻が冗談交じりに言うのを、リフォームの打ち合わせで何度か聞きました。
そのお宅は、2人の子どもが成人、夫は早期退職で、60を待たずに夫婦の第2の人生がスタートしたばかりでした。築25年のマンションを一新したいということで呼ばれて行ったのですが、水廻りや玄関など全体を見直したい妻と、「リフォームなんて壁紙を替えれば終わりだろう」と簡単に済ませたい夫とで意見が割れ、なかなか折り合いがつきません。平行線をたどる一方でした。
ところが。いざ工事が動き出して、壁紙やカーテン、照明器具を選びにショールームへ行く段階になると、必ず夫婦揃って来られるのです。そして2人して、ああでもない、こうでもないと夢中になって商品を見比べています。冒頭の台詞がウソのような光景でした。もちろん、いまもリフォーム後のきれいで快適な家に夫婦で暮らしています。
夫の定年を機にリフォームした夫婦では、工事が終わってみると打ち合わせの頃より仲睦まじく見えることがよくあります。
リフォームという一大イベントを2人で知恵と力を出し合ってやりきって、熟年夫婦の仲が深まるとしたら、定年時のリフォームは「第2のケーキカット」と言えるかもしれません。