歳を重ねるにつれて起こる身体の変化。個人差はありますが、確実に機能は低下していきます。
高齢者というと65歳以上を指しますが、 75歳未満では高齢者といっても身の回りのことを自分で行える率が高いといえます。「後期高齢者」と呼ばれる75歳以上では、病気にかかる割合や寝たきりになる割合が高まります。
内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によると、65〜74歳と75歳以上の被保険者について、それぞれ要支援・要介護の認定を受けた人の割合を見ると、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇するのがわかります。
近くのものが見えにくい、暑さ寒さがこたえる、つまずきやすいなど、何かひとつでも心当たりがあれば、75歳になる前に住まいを見直し、できるだけ長く自宅で暮らせるようにすることをおすすめします。
ここでは、身体にどのような変化が起こるのかを知り、それに対して建物にどういう配慮が必要なのかをみていきましょう。
●身体全般の変化
筋力の低下やバランス感覚の衰え、運動神経の伝達速度の低下によって素早い動作ができにくくなり、転びやすくなります。骨や関節が細くもろくなるので、転ぶと骨折しやすくなります。また、若いときに比べて、手や足などの身体を動かせる範囲も狭くなります。弱った機能を建物側で補う工夫が求められます。段差をなくす、柔らかい仕上げ材を選ぶ、手すりをつけるなどの配慮は、転倒を予防し、大きなケガに結びつけない方法として有効です。
内臓の機能が低下すると、呼吸や消化、排泄などに影響が出てきます。階段の上り下りが負担になったり、トイレに行く間隔が近くなったりします。そのためトイレの位置や階段の勾配などを考える必要があります。さらに、血管の弾力性も低下します。生活習慣と動脈硬化などの要因と、急激な温度差が結びついて、脳や心臓の重い病気の引き金にならないよう、間取りや空調に配慮します。
●視覚
目の機能低下に伴い、色の識別や明暗に対する順応力が落ちます。また、視力の低下や、視野(一点に視線を固定したままの状態で見ることができる範囲)が狭まるなどの症状によって、物が見えにくくなっていることがあります。採光や照明だけでなく、色彩面への配慮も大切です。
●聴覚
聞き取りにくくなるため、テレビの音量や話し声が大きくなります。低い音より高い音の方が聞き取りにくいようです。大きい音量が周囲のストレスにならないよう、遮音の工夫も必要です。逆に騒音の中では、音が聞き取りにくくなるので、居室の位置を静かな場所にもってきたり、電話やチャイムの設置場所を配慮します。
●触覚・嗅覚
嗅覚の他、触覚や痛覚などの皮膚の感覚も鈍ってくるので、ガス事故や火傷などの心配が高くなります。ガス漏れ警報器や消火設備を設置することが求められます。最近では、オール電化も進められ、着衣に火が燃え移る危険性を減らすことができるようになりました。
温度変化に対する感覚の衰えに加えて、汗が出にくくなるなど、体温調節もしにくくなるので、冷暖房や換気にも気を配ります。
身体の変化と建物の工夫
身体変化 | 現象 | 建物の対応 |
骨格機能 神経系 筋機能 |
|
|
視覚機能 |
|
|
聴覚機能 |
|
|
内臓機能 |
|
|
その他 |
|
|