急勾配のスロープは危険【50代リフォーム㊹】

建物の床面と敷地の高低差を解消する方法のひとつに、スロープ(傾斜路)があります。

建築基準法では木造住宅の床高を45㎝以上としていますので、1/12の勾配にすれば、一般的な住宅の床まで上がるためには約6mの長さのスロープが必要になる計算です。スロープは、距離が長くなるほど勾配を緩やかにする必要があります。

一般的な住宅の敷地では距離がとりにくいのですが、勾配を1/10よりゆるやかにしないと、実際に車いすで使うことは難しくなります。

スロープの始まりと終わりには、最低でも1mの平坦部を確保し、車いすが門や扉にぶつかる危険を回避します。幅を90㎝程度はとって、両側には落下防止用に縁石を設けます。スロープの上端下端には排水孔をつくっておく必要もあります。

雨や雪で滑る危険を避けるためにスロープ表面の仕上げにも注意を払います。モルタル塗りの場合は、粗めの刷毛で仕上げたり、一定の間隔に目地をつけます。タイル張りなら滑りにくいタイルを選びます。

先々取り外しが可能な軽量簡易スロープを使うこともあるかもしれません。そのとき、簡易スロープの利用を前提にして設計の計画を立てておけば、より安全で使いやすくなるでしょう。

身体の機能が弱った方にとって、外に出ることはとても大切です。急勾配のスロープよりも、ゆるやかな階段に手すりをつけるほうが使いやすい場合もあります。気軽に外出できるためのかたちを柔軟に考えたいものです。

家の外廻りについては以下の記事もご覧ください。→見落としがちな外廻り

●スロープには距離が必要
居間に続くウッドデッキからのびる木製のスロープ。スロープをつけることでガーデンライフも楽しむことができる。

●スロープ傾斜の目安
一般的には勾配は度で表したり、1mの高さを上がるのに何m必要かを分数のかたちで表す。1/12は、1m上がるのに12mが必要ということになり、分母の数が大きいほどゆるやかな勾配になる。

車いす対応のバリアフリーリフォーム(大滝建築事務所)
庭からスロープでアプローチし、掃き出し窓を出入り口として施工事例。

吉田紗栄子、寺林成子著『50代リフォーム 素敵に自分流』(財団法人 経済調査会)より
PHOTO©GYRO PHOTOGRAPHY/a.collectionRF /amanaimages
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