ケアリングデザインが2018年に訪れたフィンランドとノルウェーのシニア施設のホスピタルアートを紹介するシリーズ第三回目は、ノルウェー「ウルル・ヘルスビッグ」です。
「ウルル・ヘルスビッグ」は、Drøbakゴルフコースとウルル沼(Ullerudtjernet)に隣接した、ノルウェー最大の木造ヘルスケアセンターです。ナーシングホームでは、現在160名、平均年齢85歳の入居者が、24時間ケアサービスを提供されています。
●芸術委員会の設置
「ウルル・ヘルスビッグ」の特徴は、芸術委員会が設置されてきちんとアートに対する予算が設けられていることです。250万クローネ(約3,260万900円)の予算(フロン自治体から200万クローネ、パブリックアートを推進する公的機関KORO Public Art Norway から50万クローネ)を使って、建物および施設内のアート作品をドロヴァクアーティストフォーラムに依頼しました。ここでは、積極的に地元アーティストが起用されています。
以下の現地ウェブに芸術委員長の取材記事が紹介されています。
→「古い思い出を再現できるアート」ウルル・ヘルスビッグの芸術委員長が語るアート作品の意義
「ウルル・ヘルスビッグ」では、日常生活の中にある芸術作品は、住民だけでなく、訪問者、そこで働く人々、すべての人のためにあるものだという考えのもとに作品が選定されています。では、外観や内部の作品を見ていきましょう。
Photo Jiri Havran
建物の外観にある、彫刻家アニカ・オスカーソンと、ランドスケープデザイナーのトーマス・ノードストロームによる作品「Wings, flying」。
Photo Jiri Havran
夜間には、写真のような印象的なイメージに変化します。
“Rådyr” – Skule Vaksvik. Gave til Grande sykehjem fra Follo Sparebank
建物のまわりにも彫刻作品。
“Ullerud hage – Noe å snakke om” keramiker Arild Berg 0g landskapsarkitekt
こちらは中庭のパーゴラのタイル作品。
パーゴラの下には、休憩スペース。
中庭の芝生にもタイル作品の展示。
“Der solen er stum”Anna Gudmundsdottir
1階カフェテリアの壁面にも作品。
こちらはエクササイズルームです。
“Klangverk” Trine Mauritz
廊下に飾られた作品。
昔の風景写真も飾られています。
訪問者用の小部屋。窓から見える緑の景色に合わせた、明るい色調の作品。
訪問者用の小部屋。
“Firkantfat på gul vegg” Bente von Krogh
エレベーターホールの作品。各フロアのゾーニング情報を与える目的もあり、各フロア毎に壁面の色彩が変えられて、個性的な作品が飾られています。上記写真は、セラミックタイルを用いた作品。
異なるフロアのエレベーターホール。こちらは黄色い壁面に映えるドローイング作品です。
“Eleven Og Veien” Øyvind Torseter
絵と絵がつながって、ひとつの作品になっているのもおもしろいですね。
“Veien” Øyvind Torseter
異なるフロアの作品。
見ているだけで楽しくなる、ストーリーのある作品でした。
「ウルル・ヘルスビッグ」に展示している作品をまとめたアートブック『ULLERUD HELSEBYGG – et attraktivt sted for alle 』(A4変形・36ページ・オールカラー)。
アートブックまであるのは「ウルル・ヘルスビッグ」だけでしたが、ホスピタルアートを真剣に考えている由縁ですね。フロアを移動しているだけでも、さまざまな作品が目に入ってきて、楽しい施設でした。確かに、入居者だけでなく、ここで働く人や訪れる人の気持ちを和ませてくれるものでした。
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