アアルトの自邸から徒歩10分ほどの場所に、彼のアトリエがあります。さまざまなプロジェクトを手がけていたアアルトは、自宅兼アトリエだった自邸の近くにアトリエを建てました。
閑静な住宅街の中に佇む白レンガのアトリエは、傾斜地を利用した中庭、中庭に面した吹き抜けのある白いアトリエ、二階の製図室、一階の増築部分のタベルナ(キッチン)兼休憩室で構成されています。
タベルナ(キッチン)には、自邸と共通した部分が多くあります。厨房とダイニングの仕切り。
アアルト事務所のルールは、「休憩中は仕事の話をしない」ということ。小さなタベルナのスペースでアアルトがいつも座るのは、いつも奥のテーブルだったそうです。
二階の製図室は、現在はアアルト財団のオフィスとして使っています。奥半分は立ち入り禁止エリア。
片側に傾斜した白い屋根が、中庭の緑や太陽光を反射させて、開放感溢れる明るい仕事部屋をつくりだしています。
製図室には、当時使っていた製図用品や資料がそのままに展示されていて、往時を偲ばせます。
メガネはアアルトのものでしょうか?
製図室に展示されていた鉄のオブジェ。
実はこれは、アアルトがデザインした市内にある地下駐車場入口の手すりの一部が盗まれたもの。アアルトのアート作品としてクリスティーズに出品されていたところを、アアルト財団が発見して取り戻したそうです。ヘルシンキでは市内のいたるところにアアルトのデザインが溢れています。しかし、鉄の手すりを盗んでオークションに出品するとは、アアルト人気も過熱気味ですね。
ミーティングルームに収納されている図面入れのデザインも美しい。中の図面本体はアアルト美術館に所蔵されているそうです。
中庭に面した白い吹き抜けのアトリエは、建築計画や照明・家具のプロトタイプの最終検証に使われていました。
そこかしこに照明や家具が置かれていて、アアルトファンを喜ばせます。
アトリエで使っている床暖房は50年前のものですが、いまもそのまま利用されています。長く使えるものを、きちんと手入れしながら使う。アアルトのアトリエだけに留まらず、そんな当たり前のことが、フィンランドにはいまも息づいているように感じました。
フィンランド・ヘルシンキ
アルヴァ・アアルトのアトリエ STUDIO AALTO