段差があってもバリアフリー【50代リフォーム⑦】

生活の欧米化が当たり前になってきても、玄関で靴を脱いで室内に入る生活様式だけは変わりません。高温多湿な日本の気候には、靴を脱いで暮らすことが、快適でくつろげるからなのでしょう。

玄関の上がりかまちは、日本人としてのアイデンティティであり、「けじめ」なのかもしれません。ですから、バリアフリー住宅といっても、玄関土間とホールの段差をつける場合もあります。

古い住宅はもちろんのこと、いまでも純和風の住宅では、30㎝以上の段差があり、上がりかまちに腰かけて靴ひもを結びます。足腰が弱くなってくると、この動作は厄介です。手すりにつかまるか、もう一段踏み込み板が必要になります。

戸建ての場合は、玄関外のポーチ側の高さを上げて、玄関土間と同一レベルに揃えます。そうすることによって、上がりかまりの段差を小さくすることができます。

小さな段差は1ヵ所にまとめて、「ここは段差あり」とはっきりわかるように工夫しましょう。床の色を変えたり、照明を明るくしたり、壁に手すりをつけるなど、注意を喚起するような配慮が大切です。

まとめて段差をつける場合でも、最高で10〜15㎝程度にします。このくらいの段差だと、健常な高齢者なら介助なしで上がることができるからです。

段差がまとまっていれば、いざというとき、段差解消機(※)で解消することもできます。あそこで5㎝、ここで3㎝と細かく段差をつくらないことがポイントです。

※段差解消機:数㎝から数mまでの段差を解消するための設置機器。設置場所の状況に応じてさまざまなタイプがあります。

道路から2mほど高い敷地に建つこの家は、地下部分を一部車庫として使っているため、ソファの奥に見える寝室は、居間よりも30cm高くなっています。
ソファの横に段差解消機を置けば、30cm床が上がっている寝室から居間や浴室へも行き来ができるようになります。

吉田紗栄子、寺林成子著『50代リフォーム 素敵に自分流』(財団法人 経済調査会)より
この記事をSNSでシェアする

関連記事