バリアフリーの基本【50代リフォーム⑤】

バリアフリー住宅というと、「段差なし、手すり付き」と思っていませんか? バリアフリーの基本は、障がいのあるなしにかかわらず、居心地がいい住まいであることです。

居心地がいい住まいの必要条件は

・心地良く風が通り、十分に陽の当たる住まいかどうか
・日常生活を送るうえで、転ぶなどの家庭内事故が起こりにくい安全な住まいか
・非常時の避難経路が確保されているか
・シックハウス症候群の症状が起きないか
・自立した生活が長く送れるか
・介護がしやすいか
・光熱費があまりかからなくて維持管理しやすいか

ということです。

さらに、いざというときのために、ふだん使わなくても不自然ではない、「スペースのへそくり」をつくっておきましょう。身体機能が衰えたとき、「トイレを寝室の近くに設けたい」「エレベーターを付けたい」と思っても、スペースがなければあきらめてしまうか、再度リフォームして間取りを変更しなくてはなりません。

そんなとき、寝室の押入れを少し余分にとっておくか、玄関のホールや収納を広めにしておくなど、事前に配慮しておけば、難なく解決できます。

50代からのリフォームでは、そうしたことも念頭に置きましょう。

バリアフリーにしたことが不自然に感じられたり、使いにくかったりしたら、それはどこか間違ったリフォームなのです。元気なときでも身体機能が衰えても心地よく暮らせる、それが本来のバリフリー住宅なのです。

 

写真は、最近リタイアされた60代のご夫婦のお住まいです。夫は車いすを使用されています。風と光がいっぱいの居間・食堂から、バリアフリーサッシュでつながるウッドデッキは第二の居間であり、避難経路でもあります。床は車いす走行にも快適なフローリング、壁は自然素材の珪藻土を用いています。太陽エネルギーによる床暖房で、家中の温度は常に一定となっています。

家にいる時間の長くなる60代以降の暮らしを支える住まいには、こうした居心地のよさとバリアフリーは必須条件です。

 

吉田紗栄子、寺林成子著『50代リフォーム 素敵に自分流』(財団法人 経済調査会)より
写真撮影:大戸英二
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