わたしは美術大学の3年次でインテリアデザインを専攻して、それから数十年ずっとインテリアデザインの仕事に関わってきました。
よく飽きもせず、と自分でも思いますが、世の中のデザインに求めることも、わたし自身の興味もゆるやかに変化しています。
その興味は、今 “ここちよさのデザイン” というところにあります。
きっかけがありました。
数年前に、お誘いがあり北欧の建築を観てまわりました。デンマーク、スウェーデン、フィンランドと 建築も家具もすばらしいのですが、特徴は自然、素材との調和、その佇まいの何気なさ、心地よさです。日本人が本来もつ感性にも通じるものです。
ここちよいって、いったいどんな事でしょう。
人によって感じ方が違うとしても、あきらかに気分の良い場所ってありますし、またその反対もしかりです。
わたしのコラムでは、心地よさのExampleをいろいろ尋ねて行きたいと思います。
まずは、王冠の心地よさ。
フィンランドが生んだ20世紀を代表する建築家、Alvar Aalto アルヴァ・アアルト(1898〜1976)の建築。
「Paimio(パイミオ)」は、アルヴァ・アアルトが1929~33年にフィンランドの都市パイミオに建築したサナトリウムです。
1933年、当時流行していた結核で患った人のための療養所として、設計されました。 まわりは、深い森。バルコニーからは静かな森の風景が見渡せるように設計されています。 いたるところに患者の心を少しでも癒したいというというアアルトの想いが感じられます。
http://www.artek.fi/
この階段の色、きれいなカスタードイエローです。イエローは 太陽の色、暖かさを表しています。結構な面積にイエローが使われているのですが、少しも違和感がないのです。北欧の極寒の冬を前提とした色使いです。手すりのベースに塗られたコバルトブルーも効いていますね。
ダイニングテーブルに置かれたランチョンマットだけで 心地よいリズムと温度が生まれています。
病室です。窓からは木立が見渡せます。窓前の明るいところにデスクカウンターが設けられています。ベッドカバー、天井の色も明るいブルーです。壁に取り付けているのは、やわらかな白い曲面扉のキャビネットです。私物を入れます。
パイミオは現在も 普通病院として運営されています。